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ロドみ

Author:ロドみ
Web漫画家。男。関西在住。週刊少年ワロスさんや新都社さんで漫画を掲載。2010年4月、宙出版さんのネクストコミック大賞を受賞した事により商業誌デビュー。酒好きです。

何かありましたら記事のコメント欄にでも書いておくれやす。


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ワカメ
僕が入社した会社には、藤堂さんという先輩がいた。当時、僕は会社の人と上手く馴染めなかったが、藤堂さんはとても親切に接してくれた。

「おはよう、どうだい、仕事には慣れたかい?」
「いや、まだまだです。わからない事も一杯だし、他の人みたいに要領良く仕事をこなせなくて…」
「大丈夫だよ、最初はそんなもんだ。海を漂う海藻のように、焦らず、気長にやればいいんだよ。」
「そう言ってくれると、自信が持てます。」

藤堂さんは、天然パーマで、髪に少しうねりがあった。雨の日には、湿気でボリュームが増えるのを気にしていた。誰も人の髪型をそこまで注意して見ないのに、と思いながらも、少し気弱な表情をする藤堂さんが好きだった。

「あー、雨嫌いだわー。」
「そんなの、気にしないでも大丈夫ですよ。」
「いや、この悩みは天パじゃないとわかんないんだよ。」
「そんなもんですかねー。」

次の日も雨が降っていた。前日に気にしないでもいいとは言ったものの、その日の藤堂さんの髪型には何か違和感を感じた。

「また雨だよー、空の神様は天パが嫌いなのかねー。」
「確かにねえ、藤堂さんの頭、ワカメみたいになってますよ(笑)」
「ワカメか、ミネラル豊富だからワカメの方がマシかもな。」
「何を言ってるんですか、パーマあてたみたいでいい感じ…」

藤堂さんの髪型に触れ、驚き、次の言葉が出なかった。人の髪の手触りではなく、明らかに海藻類を触れた時の独特のヌメリがあった。僕は何と声をかければ良いのかわからず、とりあえずその場を濁して立ち去った。

次の日も雨が降っていた。

藤堂さんの頭は、3倍ぐらいに膨れがっていた。

「おいおい、何をじろじろ見てんだよ?俺の顔に何かついてるか?(笑)」

顔じゃなくて頭です、とは言えず、適当に返事してその場をやりすごした。藤堂さんの中の何かが壊れていく気がした。もとい、何かがふやけていく気がした。

次の日も雨が降っていた。

オフィスの一角にある藤堂さんの席。そこに座っているのは藤堂さんというより、もはやワカメだった。
頭、体、腕、足、本来、人が持っているパーツの原型はわずかに留めているものの、どう見てもワカメだった。

「藤堂さん、なぜこんな姿に…」

人はワカメにはならない、そんな誰もが持つ常識が簡単にくつがえされ、誰もが驚愕と遺憾の意を示した。

「どうしよう、藤堂君がワカメになってしまった…」
「これでは仕事にならない、速やかに帰宅させよう、いや、出荷しよう…」

会社の人がそう呟く中で、僕は叫んだ。

「ちょっと待ってください!ワカメになろうが何だろうが、この人は藤堂さんです!」
「いや、しかし…」
「しかしもへったくれもありません、お願いです、藤堂さんをここに居させてください!」
「だが、君…」
「お願いです、僕が毎日世話をしますから!!!」


あれから20年、僕は順調に仕事をこなし、課長の役職を得た。

その20年間で、欠かさず続けたライフワークがある。

朝早くに出勤し、オフィスの端にある水槽に声をかける、というものである。

「おはようございます。今日も藤堂さんのように、焦らず、気長に仕事を進めていきます。」

朝日で水槽が輝いていた。
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この記事に対するコメント

ショートショートですな。
【2007/09/09 00:02】 URL | k #- [ 編集]


ショートショートがわからんくてWikiで調べてきたぜ。
うむ。ショートショートだ。
【2007/09/09 02:44】 URL | ロドリゲスみよし #- [ 編集]


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